Japanische Klassiker mit Furigana
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りんらくのこうじょのおぼえがき
淪落の皇女の覚書
久生 十蘭
Lesen Sie 淪落の皇女の覚書 (りんらくのこうじょのおぼえがき) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.649 Zeichen · 56 Bildschirme
「ママは一日中不機嫌で、口をひらけばパパを非難することばかり。そういうひどい生活をパパは力強く耐え、家族を自分のまわりに置いて世話してやれるというのはなんという大きな恵みだろう、この生活が永久につづけばいいなどとおっしゃるのよ。なんという同化力! パパは宮殿の生活にもシベリヤの生活にも同じように調和できるのです。
うれしい話をします。エカテリネンブルグの停車場の暗闇で、誰か知らないひとが通りすがりにあたしの手の中へそっとなにか握らせてくれました。なんだと思います? お金を十七留と五十哥……これがあたしの生涯でのただ一つの宝で、そうして全財産です。今日は寒かったのでストーヴを焚きました。薪がパチパチ燃えだすと、トボルスクのこじんまりした家のことを思いだしました。白粉をすこし送ってください。あたしのはみなになったのよ。この手紙が着くころはあなた方はこちらへ出掛けるくらいのところでしょう。マーシャ」
トボルスクは町の東側にある陰気な沼地からあがる水蒸気のため、冬は寒く、夏は暑いという不愉快な土地でした。町の建物は半分以上森の中にあるのですが、私たちの家は赤煉瓦の地下室付の二階建で、露台と外廓がつき、高い塀で囲まれた広い中庭がありました。