Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
うずまけるからすのむれ
渦巻ける烏の群
黒島 伝治
Lesen Sie 渦巻ける烏の群 (うずまけるからすのむれ) von 黒島 伝治 (くろしまでんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 17.240 Zeichen · 35 Bildschirme
「どうぞ。」
「何か、いいことでもあるかい?」
「何ンにもない。……でもいらっしゃい、どうぞ。」
その言葉が、朗らかに、快活に、心から、歓迎しているように、兵卒達には感じられた。
兵卒は、殆んど露西亜語が分らなかった。けれども、そのひびきで、自分達を歓迎していることを、捷く見てとった。
晩に、炊事場の仕事がすむと、上官に気づかれないように、一人ずつ、別々に、息を切らしながら、雪の丘を攀じ登った。吐き出す呼気が凍って、防寒帽の房々した毛に、それが霜のようにかたまりついた。
彼等は、家庭の温かさと、情味とに飢え渇していた。西伯利亜へ来てから何年になるだろう。まだ二年ばかりだ。しかし、もう十年も家を離れ、内地を離れているような気がした。海上生活者が港にあこがれ、陸を恋しがるように、彼等は、内地にあこがれ、家庭を恋しがった。
彼等の周囲にあるものは、はてしない雪の曠野と、四角ばった煉瓦の兵営と、撃ち合いばかりだ。
誰のために彼等はこういうところで雪に埋れていなければならないだろう。それは自分のためでもなければ親のためでもないのだ。懐手をして、彼等を酷使していた者どものためだ。