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Japanische Klassiker mit Furigana

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おんしつのこい

温室の恋

国枝 史郎

Lesen Sie 温室の恋 (おんしつのこい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.010 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

季参の持って来た紅茶の中に毒でも這入っていたと見えてそれを飲んだ晩に吐瀉したなどと左様云ったような話であった。

「私と雪枝とはあの男のために遠からず殺害されましょう。私にはそんなように思われます。ご迷惑のお願いかも知れませんが、私が殺されたとお聞きになりましたら、今日の話を父の許までお知らせ下さることは出来ますまいか。これをお頼みしたい為にお伺いしたのでございますが」

最後に彼は斯う云ったので、私は笑い乍ら諾なった。

喜んで帰って行く彼の姿を私は門口で見送っていたが、確かこんなように呟いた筈だ。

「あまりに恋愛が幸福過ぎるとつい不安心にも思われるものさ。あの美しい青年は自分で自分の恋愛に不安の陰影を投げている迄のものさ」

私の考えは正しかったと見えて、平和な木曾の福島町には、秋が行って冬が来て、その冬が終えて春になっても是という事件も起こらなかった。

福島の春の美しさ! 桜咲き鳥啼き水流れ、夢のようだと云いたいが其夢よりも美しい。町の人達は芸者を連れて妙見山へ出かけて行き山々谷々に咲き乱れている薄紅の桜の花を酒の肴にして宴を開き、夜になるのを待ち兼ねて提灯を点もして山を下り町筋を陽気に練りながら料理屋さして繰り込むのであった。