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Japanische Klassiker mit Furigana

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おんしつのこい

温室の恋

国枝 史郎

Lesen Sie 温室の恋 (おんしつのこい) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.010 Zeichen · 22 Bildschirme

Aozora Bunko

と、その温室の戸が開いて姿を現わした者がある。雪枝と而して美青年である。珍らしい事には二人共支那服を纏っているではないか。私は思わず足を止めた。しかし二人はこの私には一向気付いていないらしい。

「水ヲ渡リ又水ヲ渡ル」と、雪枝が朗吟した。

すると青年が後を付けた。

「花ヲ看還花ヲ看ル」

「春風江上ノ路」

「覚ズ君ガ家ニ到ル」

「でも今は春じゃありませんわね」雪枝は斯う云って笑い出したが夫れは男のような声であった。

「春だって直きに参りますよ」斯う答えたのは青年であるが、その声の中には云うに云われない悲哀の調子が籠もっていて酷く私の心を打った。すると雪枝は復笑って青年の方へ走り寄ったが両手を前へ差し出すと青年を軽々と抱き上げて温室の中へ這入って行った。つまり姿を隠したのであるが、それから二人は何うしたろう! 何んで私が知るものか!

とは云え私は歩き出し乍ら斯う呟いたのは事実である。

「温室の恋よ。蒸されたる恋よ。……青年の方が受身らしい。女の方が年齢も上だ。さて、今のような甘ったるさでは接吻ぐらいでは済まされそうも無いが……それにしても女のあの腕の力は何んと魂消たものでは無いか! あの力でグイと抱き締められたとしたら? おお青年は壊れるかも知れない。