Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こんとんみぶん

渾沌未分

岡本 かの子

Lesen Sie 渾沌未分 (こんとんみぶん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.232 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

「あたし、何にも知らないけれど、あんた、この頃でもうちの父に、何かお金のことで面倒を見ているの」

「いや、金はもう、老先生には鐚一文出しません。失くなすのは判っているんだから。それに老先生だって、一度あたしが保証の印を捺して、いまでもどんなに迷惑しているか、まさか忘れもしなさらないと見え、その後何にもいい出しなさりはしませんがね」

貝原は宮大工上りの太い手首の汗をカフスに滲ませまいとして、ぐっと腕捲りして、煽風器に当てながら、ぽつりぽつり、まだ、通しものの豆を噛んでいる。

小初は一しきり料理を喰べ終ると、いかにも東京の料理屋らしい洗煉された夏座敷をじろじろ見廻しながら、

「あなた、道楽なさったの」と何の聯想からかいきなり貝原に訊いた。

「若いときはしました。しかし、今の家内を貰ってから、福沢宗になりましてね、堅蔵ですよ」

「お金をたくさん持って面白い」

「何とか有効に使わなくちゃならないと考えて来るようになっちゃ、もう面白くありませんな」

「そう」

小初は、もう料理のコースの終りのメロンも喰べ終って、皮にたまった薄青い汁を小匙の先で掬っていた。

ふっとした拍子に貝原と小初は探り会う眼を合せた。