Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

「オーイ船頭、いや船長、ふ、船を出してくれ」

その、死んだように酔っ払った、外套のない男は、足を流れにとられながら、船員の側に歩み寄って来た。

「出せ、船を出せ」

「冗談じゃないよ、時間切れだぜ。これでも、東京市橋梁課の渡船なんだ。お役所仕事だぜ。銭をとる渡しと、ちったァわけがちがうんだ」

「頼む、今夜は洲蘆の出島に、ぜひにもの用があるんだ。ねえ君、判任官閣下、頼むから君、かけ合ってくれ給えな」

が、間もなくその男の眼は、巡査にも船員にも向けられていなかった。まるで、悲しむような、それでいて、異常な興味をたたえている、抉るような視線を、船待ちの屍体のうえに注いでいるのだった。

「どうだ判任官閣下、君はこの屍体が、他殺か自殺か判明せんと云ったね。君、この屍体の胃袋を、押してみたらどうだね。ハハハハハそれで分ったら、御褒美に洋行のことをかけ合ってくれ給え」

巡査の頭巾の蔭には、その四十男を見る不審そうな眼が瞬いている。垢染みた、硬い無精髭が顔中を覆い包んでいるが、鼻筋の正しい、どこか憔悴れたような中にも、凛とした気魄が仄見えているのだ。

「そうか、それでも足りなきァ、船賃に追い付くまで、もう少し弁じようか。