Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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せんこうてい「ハビヒツブルグ」

潜航艇「鷹の城」

小栗 虫太郎

Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme

Aozora Bunko

そこで、下腹の傷だがねえ。見給え、それだけが――なに、推進機でやられたように真直だと。それだから、君はまだまだ講習が足らんというのだ。だいたい人間の、自然の手の運動というやつは、曲線なんだ。対象を見ないでいて――つまり例を引けば、盲人の手の運動だが――けっして、正しい直線を自然に描けるものじゃない。ところがこの屍体には、それが逆の論理になっている。背後から抱えられて、グサリと突き立てられたとき、屍体には、屈むのと、伸びる反射運動とが連続して起るのだ。だから創の歪みが、その屈伸に符合する。正数が負数に化ける。二段に起る、曲線が直線に是正されてしまうんだ。ハハハハ、分ったかね。それにこいつぁ、創の浅まり方から考えても、明白に左利きだ。ねえ判任官閣下、この屍体の犯人は左利きなんだぜ」

途端に、巡査の眼からは光りが消え、彼は阿呆のようにぽかんと立ち竦んだ。

その憔悴したさま、滴のしたたる蓬のような髪の毛、それを仄めぐって、陰火のような茫々としたものが燃えあがっている。

この男には、自然としか見えぬものでさえも、矯め直す不思議な魔力があるのだ。と、巡査には、なにか人間放れのした神秘的なものを見るように、この男が薄気味悪くなってきた。