Japanische Klassiker mit Furigana
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せんこうてい「ハビヒツブルグ」
潜航艇「鷹の城」
小栗 虫太郎
Lesen Sie 潜航艇「鷹の城」 (せんこうてい「ハビヒツブルグ」) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 132.395 Zeichen · 263 Bildschirme
すると、その男の顔に、巫山戯たような笑いの皺が打ちはじめて、
「ハハハハ、まだ合点がいかんのかね。左利き――それが、ギリギリ結着というところだ。早く犯人を挙げて、暮にはたんまりと暖まるさ」
そう云って、莨を取り出し、燐寸を摺ったその手を見たとき、巡査は頭から水を浴びせられたような気がした。
この男が、左利きではないか。
赭く、燐寸の灯影にちらつく、刻みあげたような陰影――それを、怖れるかのようにまじまじと見詰めながら、巡査の鼓動がドド、ドドっと走りはじめたのである。そうして、細かい雨と冷たい闇とを挟んで、二人の間には息詰るような沈黙が流れていった。
すると、背後に跫音がして、ひとりの警部補がヌウっと顔を突き出した。
「君、どこかに首なしが、上がったと云うじゃないか」
ところが、その警部補は不思議なことにも、男の横顔に、凝っと視線を据えたまま動かない。その顔には、なかば驚きを交えた、複雑な色が掠めてゆく。そうして、なにやらもそもそと語り合っていたが、やがて船員に、もう一度発船するように命じた。
「有難い、助かった。君は、なるほど話が分るよ。オイ、東京市橋梁課のお役人、ふ、舟を出せ」