Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうねん
潤一郎ラビリンスI――初期短編集
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスI――初期短編集 (しょうねん) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.319 Zeichen · 84 Bildschirme
「まだこゝに絵双紙が沢山あるんだよ」
と、信一は又袋戸棚から、半四郎や菊之丞の似顔絵のたとうに一杯詰まって居る草双紙を引き擦り出して、色々の絵本を見せてくれた。何十年立ったか判らぬ木版刷の極彩色が、光沢も褪せないで鮮やかに匂っている美濃紙の表紙を開くと、黴臭いケバケバの立って居る紙の面に、舊幕時代の美しい男女の姿が生き/\とした目鼻立ちから細かい手足の指先まで、動き出すように描かれている。丁度此の屋敷のような御殿の奥庭で、多勢の腰元と一緒にお姫様が蛍を追って居るかと思えば、淋しい橋の袂で深編笠の侍が下郎の首を打ち落し、死骸の懐中から奪い取った文箱の手紙を、月にかざして読んで居る。其の次には黒装束に覆面の曲者がお局の中へ忍び込んで、ぐっすり寝て居る椎茸髱の女の喉元へ布団の上から刀を突き通して居る。又ある所では行燈の火影かすかな一と間の中に、濃艶な寝間着姿の女が血のしたゝる剃刀を口に咬え、虚空を掴んで足許に斃れて居る男の死に態をじろりと眺めて、「ざまを見やがれ」と云いながら立って居る。信一も私も一番面白がって見たのは奇怪な殺人の光景で、眼球が飛び出して居る死人の顔だの、胴斬りにされて腰から下だけで立って居る人間だの、真っ黒な血痕が雲のように斑をなして居る不思議な図面を、夢中になって覗き込んで居ると、