Japanische Klassiker mit Furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme
―――「あの、尾上の雲を見るがよい。遠くから眺めると雪のように清浄で、銀のようにきら/\と輝いて居るが、あの雲の中へ這入って見ると、雪でもなく銀でもなく、濛々とした霧ばかりである。お前たちは、此の山の谷底から湧き上る雲の中に包まれた覚えがあろう。浮世はその雲と同じことだ。」―――こう云って説明されると、成る程それで分ったような気はするが、やはり何となく物足りなかった。二人が分けても物足りなく感じたのは、浮世に住んで居る人間の一種で、総べての禍の源とされている女人と云う生物を見たことのない事であった。
「麿が此の山へ登ったのは、三つの歳であったそうだが、そなたは四つになるまで在家に居たと云うではないか。そんなら少しは浮世の様子を覚えて居てもよさそうなものだ。外の女人は兎に角として、母者人の姿なりと、頭に残っては居ないか知らん。」
「まろは時々、母者人の俤を想い出そうと努めて見るが、もうちっとで想い出せそうになりながら、うすい帳に隔てられて居るようで、懊れったい心地がする。まろの頭にぼんやり残って居るものは、生暖いふところに垂れて居た乳房の舌ざわりと、甘ったるい乳の香ばかりだ。