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Japanische Klassiker mit Furigana

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こぞうのゆめ

潤一郎ラビリンスV――少年の王国

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme

Aozora Bunko

(二)の十一

己はあの時、たとえ命を要求されても、きっと否だとは云えなかったろう。どんな厳しい、どんな苦しい命令を受けても、己には到底あの黒ん坊に反抗するだけの勇気はなかった。一言一句唯々諾々として、黒ん坊の御機嫌を伺って居るばかりであった。

己は二人の子供と一緒に、舞台の中央の椅子にならんだ。そうして、二人が順々に眠らされて、自分の番が廻って来るのを待って居た。―――待って居たと云うと、己の意識はいかにもハッキリして居たようだが、その実一切渾沌として、霧の中に包まれて居るのだった。昔、磔刑になる人間は、十字架の上へ乗せられると、既に半分正気を失って居たと云うが、己は椅子に腰をかけたとたんにもう、催眠術にかゝッて居た。黒ん坊から二十銭貰った義理などを考える暇はなかったらしい。

(二)の十一

二人を眠らせたメリー嬢は、やがて己の椅子の前へ来て、ちょうど子供が睨めっくらをするように、じっと己の瞳の奥を凝視した。そうして、

“Sleepy, Sleepy, Sleepy”

と云いながら、変なめくばせをした。その時、己とメリー嬢との顔は、僅かに五寸ぐらいの間隔を置いて、向い合って居た。