Japanische Klassiker mit Furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme
もうわたくしは二度と再び、今夜のような浅ましい考を起すことはございませぬ。どうぞお許し下さいまし。」
もうどんな事があっても、自分は人の誘惑に乗りはしない。千手丸が現世の快楽に耽りたいと思うなら、独りで勝手に耽るがよい。それで来世は無間地獄へ真っ倒まに落されて、無量劫の苦しみを忍ぶがよい。その折にこそ自分は西方浄土へ行って、高い所から彼の泣き喚く姿を瞰おろしてやろう。もう何と云われても、自分の信念は揺ぎはしない。自分は危機一髪の際に喰い止めたのだ。もう大丈夫、もうたしかだ。
瑠璃光が斯う云う決心に到達した時、長い秋の夜がしろ/″\と明るくなって、暁の勤行の鐘が朗らかに鳴った。彼は平生より幾層倍も緊張した心を抱いて、今しがた眼を覚ましたらしい上人の居間へ、うや/\しく伺候した。
千手丸の使の男は、その日の朝の卯の刻ごろに、文殊楼の石段のほとりに待って居ると、果して其処へ瑠璃光丸はやって来たが、少年の答は彼の豫期に外れて居た。
「浮世は面白いであろうが、まろには少し仔細があって、山を降りるのを止めにする。まろは女人の情よりも、やはり御佛の恵みの方が有り難い。