Japanische Klassiker mit Furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme
己が奇怪な幻を見たり、不思議な妄想に悩まされたりするのは、ちょうど桜の枝に麗しい花が咲いたり孔雀の体に絢爛な羽根が生えたりするのと同じく、自然の意志の純真なる発現ではあるまいか。」
そのうちに、己はふと、こんな理屈を考えるようになった。いや、己が考えたのではなくて、こんな思想が、何処からともなく、自分の耳へひそひそと囁かれるような気持ちがし始めたのだ。「お前は実業家なぞになる人間ではないのだぞ。お前の天職は外にあるのだぞ。お前が自分の缺点だと信じて居る性癖は、其の実、幾百萬の人間のうちで、纔かに一人か二人しか持つ事の出来ない、貴い珍しい能力なのだぞ。」―――と云う声が、折々微に己の心に聞えて来た。己は何だか、自分の周囲を包んで居た暗澹たる雲の隙間から、遥かに天日の光を仰いだような心地がした。
そこで己は、更に考えを進めて行った。自分の天職が実業家でないとしたら、如何なる方面に其れを求めたらよかろうと、再三再四熟慮して見た。
断って置くが、己が最初に実業家たらんと志たのは、もと/\自ら撰り好んだ訳ではないのである。自分が将来、従事し得る多くの職業の内から、特に実業家を選択したのではなかったのである。