Japanische Klassiker mit Furigana
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こぞうのゆめ
潤一郎ラビリンスV――少年の王国
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 潤一郎ラビリンスV――少年の王国 (こぞうのゆめ) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 71.989 Zeichen · 144 Bildschirme
何だか頻りに口を動かしてしゃべって居るようだけれど、あまり泣きようが激しい為めに暫く貝島には聴き取れなかったが、結局、
「………お金と云ったってほんとうのお金じゃアないんだよう。にせのお札なんだってば、………」
と泣きながらも極まりの悪そうな口調で、幾度も/\繰り返しては、言い訳をして居るのであった。見ると、少年は懐から皺くちゃになった一枚の贋札を出して、それを翳しつゝ手の甲で頬っぺたの涙を擦って居た。
父親は札を受け取って膝の上にひろげて見た。其れは西洋紙の小さな切れへ、「百圓」と云う四号活字を印刷した、子供欺しのおもちゃに過ぎないもので、啓太郎の懐にはまだ四五枚も隠されて居る事が明かになった。五十圓だの、壱千圓だの、中には壱萬圓だのと云うのもあって、金額が殖えるほど活字の型や紙幣の版が大きく出来て居る。そうして、紙幣の裏の角のところには、孰れも「沼倉」と云う認印が捺してあった。
「此処に沼倉と云う判が捺してあるじゃないか。此のお札は沼倉が拵えて居るのかい?」
貝島は大凡そ事件の性質を推察して、ほっと胸を撫でおろしたものゝ、それでも未だに不審が晴れなかった。