Japanische Klassiker mit Furigana
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みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
夜の睡眠時間も長くなったらしい。肩の傷はまだ癒着しないが、その傷口はずっと浅くなった。
ある残暑の酷しい日、久振りに勤めに出た素子は、四時頃、早退きして帰宅した。
「お父さん」
書斎に入るなり、素子はそう言って、私の横に坐った。
「花井さん、お亡くなりになった、そうよ」
「病院で、最初に、同室だった方だね」
「そう、十二年前の乳癌が再発して、肋膜に水が溜っていたのでした」
「病院でも思ったことだが、十二年前のものを、再発と言えるか、どうか」
「それは、どうか知りませんけれど」
「アメリカからの注射とかを、打ってられたのだったね。血色もよくなり、元気になられたようだったがね」
「ひどく病気馴れた方で、退院なさる時、私がお祝を言うと、『どうですか。でも、これで二年ほども持ってくれたら、また新しい薬もできるかも知れませんからね』って、言ってられたものでしたが」
素子は先に亡くなった山崎さんの場合より、強い感慨を懐いたようである。この頃、素子はもう夜も麻痺薬は用いていない。それまでは、彼女の神経は、頸部の疼痛にその総べてを奪われていたに相違ない。その痛みが消えたのである。