Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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みおつくし

澪標・落日の光景

外村 繁

Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし軽いということばかりを、後生大事に覚えていて、再発し易いということは、いつともなく忘れてしまっていた人の好さに、やっと私は気づくのだった。

私は妻の枕許に腕組んだまま坐っている。

「とく、とくよ」

思わず、妻の名を呼んでみる。が、もとより何答えるはずもなかった。呼吸だけが、安らかに通っている。いかにも昏昏と眠っているようで、少しも重大さは感じられず、そうと決まれば、かえって医者の言葉がそのまま信じられた。

ふと不浄のことに気づき、蒲団の裾を捲ってみると、炬燵の火に温められた尿の臭が、むっと鼻を覆った。不意に、懐しい襁褓の臭のような愛情が、胸を鳴らして湧き起こった。

盥の中にも、美しい空の色だった。ポンプの水が跳り入ると、青空は青い破片となって、乱れ散った。しかし私がポンプの手を休めると直ぐまたぐるりと丸い青空になった。その中に、冬木の枝が綺麗な線を描いていた。しかし妻の汚れ物洗う私には、もう先刻のような不安の翳は消えていた。これだけは子供達にもさせられぬ、私の今日からの仕事だと、染み染みと思われた。

翌日も、妻は意識不明のまま、やはり眠り続けている。