Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
みおつくし
澪標・落日の光景
外村 繁
Lesen Sie 澪標・落日の光景 (みおつくし) von 外村 繁 (とのむらしげる) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 130.889 Zeichen · 268 Bildschirme
それでも私はどうにか肥立って行ったらしいが、色の白い、女の子のような弱弱しい子であったといわれる。しかしその頃の記憶は全くない。
私が数え年の四つか、五つの時のことである。私の朦朧とした記憶の中に、より黒い影のような祖父の姿が浮かんで来る。母に手を引かれて(これは後からの想像であるが)、確かに私は本家の内玄関の土間に立っていた。そこへ奥から祖父が出て来たのである。唯それだけの記憶である。更にその記憶には、祖父の顔ははっきりしない。強いてすれば、その顔の輪郭は描き得ないでもないが、それは後年、祖父の写真や、母の顔や、私自身の顔から類推した、記憶の修飾になろう。記憶の限りでは、祖父らしい者という方が正しいかも知れない。
この私の記憶はかなり信憑性があるように思われる。実際にも本家の内玄関は薄暗い。祖父は奥から逆光線を受けて出て来たものであろう。更に母の話によると、日露の戦捷を祝う草競馬が行われ、本家の桟敷が組まれ、その借用を願いに行った時のことであろうという。すると祖父は既に胃癌に犯されていたはずである。祖父の姿そのものも、俗にいう影が薄かったのではないか。