Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼくとうきだん
濹東綺譚
永井 荷風
Lesen Sie 濹東綺譚 (ぼくとうきだん) von 永井 荷風 (ながいかふう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 57.666 Zeichen · 114 Bildschirme
遊んでいる犬を見ても首環に鑑札がつけてあって、左程汚らしくもない。忽にして東武鉄道玉の井停車場の横手に出た。
線路の左右に樹木の鬱然と生茂った広大な別荘らしいものがある。吾妻橋からここに来るまで、このように老樹の茂林をなした処は一箇所もない。いずれも久しく手入をしないと見えて、匐いのぼる蔓草の重さに、竹藪の竹の低くしなっているさまや、溝際の生垣に夕顔の咲いたのが、いかにも風雅に思われてわたくしの歩みを引止めた。
むかし白髯さまのあたりが寺島村だという話をきくと、われわれはすぐに五代目菊五郎の別荘を思出したものであるが、今日たまたまこの処にこのような庭園が残ったのを目にすると、そぞろに過ぎ去った時代の文雅を思起さずには居られない。
線路に沿うて売貸地の札を立てた広い草原が鉄橋のかかった土手際に達している。去年頃まで京成電車の往復していた線路の跡で、崩れかかった石段の上には取払われた玉の井停車場の跡が雑草に蔽われて、此方から見ると城址のような趣をなしている。
わたくしは夏草をわけて土手に登って見た。眼の下には遮るものもなく、今歩いて来た道と空地と新開の町とが低く見渡されるが、土手の向側は、トタン葺の陋屋が秩序もなく、端しもなく、ごたごたに建て込んだ間から湯屋の烟突が屹立して、その頂きに七八日頃の夕月が懸って