Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かせいのうんが

火星の運河

江戸川 乱歩

Lesen Sie 火星の運河 (かせいのうんが) von 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.715 Zeichen · 10 Bildschirme

Aozora Bunko

ふと気がつくと、私の周囲には異様な薄明が漂い初めていた。それは例えば、幕に映った幻燈の光の様に、この世の外の明るさではあったけれど、でも、歩くに随って闇はしりえに退いて行った。「ナンダ、これが森の出口だったのか」私はそれをどうして忘れていたのであろう。そして、まるで永久にそこにとじ込められた人の様に、おじ恐れていたのであろう。

私は水中を駈けるに似た抵抗を感じながら、でも次第に光りの方へ近づいて行った。近づくに従って、森の切れ目が現れ、懐しき大空が見え初めた。併し、あの空の色は、あれが私達の空であったのだろうか。そして、その向うに見えるものは(?)アア、私はやっぱりまだ森を出ることが出来ないのだった。

森の果てとばかり思い込んでいた所は、その実森の真中であったのだ。

そこには、直径一町ばかりの丸い沼があった。沼のまわりは、少しの余地も残さず、直ちに森が囲んでいた。そのどちらの方角を見渡しても、末はあやめも知れぬ闇となり、今迄私の歩いて来たのより浅い森はない様に見えた。

度々森をさ迷いながら、私は斯様な沼のあることを少しも知らなかった。それ故、パッと森を出離れて、沼の岸に立った時、そこの景色の美しさに、私はめまいを感じた。