Japanische Klassiker mit Furigana
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はいいろのきおく
灰色の記憶
久坂 葉子
Lesen Sie 灰色の記憶 (はいいろのきおく) von 久坂 葉子 (くさかようこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.588 Zeichen · 132 Bildschirme
廊下続きのおはなれには、常に誰か兄弟が寐ていたけれど、私のは一番長かったようだ。クリスマスの晩、ホテルの家族会へ、毎年招かれてゆくならわしになっていたのだが、私はその一週間前あたりから床につくことがさだめられているように、風邪や肺炎をおこした。クリスマスのために、外套から靴まで新調してもらうのだったけれど、それをきちんと枕許に置いて、
「もうじきクリスマスですよ、もうじきよくなりますよ」
と、年とった医者のさしだす苦い薬をのまされた。ピンクのひらひらのついた洋服が、陰気な消毒くさい六畳の間にぶらさがっていたことをはっきり思い出す。そのピンクの年は、春まで寐ていたのだった。私の枕許には折紙でこしらえたくす玉が一ぱい天井からぶらさがっており、時折、その長い垂れさがった紙ひもが頬をなでた。私は又、寐ている間、看護婦の唄う流行歌を覚えた。母は、子供の前で絶対に歌ってならないと命じていたが、吸入器の掃除をしたり、枕許の整理をする時、自然にその白い上衣をきている彼女の口から、
「銀座の柳の下で……」
がとび出すのだった。私は、すぐそれを覚えて、何かしら切ない気持にもなってみた。