Japanische Klassiker mit Furigana
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ぼんのうひぶんしょ
煩悩秘文書
林 不忘
Lesen Sie 煩悩秘文書 (ぼんのうひぶんしょ) von 林 不忘 (はやしふぼう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 86.705 Zeichen · 173 Bildschirme
へえ、へえ、お多喜の阿魔あ、今ごろは眼の色を変えて探しておりやしょう。へへへ。」
「有森氏!」
思わず大次郎は、声を励ました。
七年ぶりに会った懐しい友の一人は、こんなに変りはてているばかりか、この七年間予期しつづけて来た親しみさえ、すこしも湧いてこないで、まるで、冷たい他人行儀。
しかし大次郎は、あくまで宗七と観ず、むかしの有森利七とのみ扱おうとして、
「田万里の件――かの出羽への怨執は、よも御忘却ではあるまいな。」
宗七はきょとんとして、
「へ?」
「煩悩が煩悩に溺れては、その煩悩の中より力を獲ることは叶わぬわけ――有森氏! 煩悩力をもって出羽を討つとの誓いはいかが召されたっ!」
すると宗七は、何を見つけたのか、ぶらりと起ち上って、
「あ! あそこの草の中に、笠がありやす。真新しいつづら笠、雨に濡れて――。」
大次郎も、頭をめぐらす。見ると、なるほど、神社の裏手の草むらのなかに、誰が置いたのか新しい葛籠笠がひとつ、そぼ降る雨を吸って、光って。
話を打ち切った二人は、足早にその草叢へ踏み込んで行った。
足が、濡れる。
裾を引き上げた伴大次郎と、今は深川の恋慕流し宗七、左右から笠を挾んで立った。