Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くるいだこ

狂い凧

梅崎 春生

Lesen Sie 狂い凧 (くるいだこ) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.430 Zeichen · 226 Bildschirme

Aozora Bunko

加納は掌をかざして、太陽を見た。太陽は赤い盆のように、光っているというより、空に懸っていた。

「もう戻りましょうか」

加納は掌をおろして言った。

「自分のとこで一杯やりませんか。その当時のアルバムもあるし」

「うん。そうしようか」

栄介は賛成した。さっきから尿意を催していたし、胴の間であぐらをかいたままだったので、背骨がしんしんと痛み始めている。釣竿がたたまれ、魚籠が引き上げられた。エンジンがポンポンと調子のいい音を立て、舟は岸の方に動き始めた。

「大漁旗でも立てると景気がいいがね、今日は話の方に身が入って、ろくに釣れなかったな」

加納は鉢巻をしめ直して言った。

「あそこにノリヒビがあるでしょう。あれも今年まででね、来年からなくなるんだ。業者は補償金をもらって、転業する」

「あんたの商売はどうだね?」

「まあね」

声は潮風に千切れ飛んだ。

「東京湾にハゼがいる限りは、どうにかやって行けるだろうと思うんだがね。終戦後イワシがさっぱり獲れなくなったでしょう。あんな具合にハゼがいなくなったら、お手上げだ。まあ、その時はその時で、どうにかなるよ」

「えらく簡単に割り切るね」