Japanische Klassiker mit Furigana
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ろうしつき
狼疾記
Lesen Sie 狼疾記 (ろうしつき) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.540 Zeichen · 47 Bildschirme
よく想像して見たりした。すると、不思議に恐怖が消えて、犬のいとしさとその体温とが、ほのぼのと思い浮べられるのであった。しかし大抵は、夜、床に就いてからじっと眼を閉じて、人類が無くなったあとの・無意義な・真黒な・無限の時の流を想像して、恐ろしさに堪えられず、アッと大きな声を出して跳上ったりすることが多かった。そのために幾度も父に叱られたものである。夜、電車通を歩いていて、ひょいとこの恐怖が起って来る。すると、今まで聞えていた電車の響も聞えなくなり、すれちがう人波も目に入らなくなって、じいんと静まり返った世界の真中に、たった一人でいるような気がして来る。その時、彼の踏んでいる大地は、いつもの平らな地面ではなく、人々の死に絶えてしまった・冷え切った円い遊星の表面なのだ。病弱な・ひねこびた・神経衰弱の・十一歳の少年は、「みんな亡びる、みんな冷える、みんな無意味だ」と考えながら、真実、恐ろしさに冷汗の出る思いで、しばらく其処に立停ってしまう。その中に、ひょいと気がつくと、自分の周囲にはやはり人々が往来し、電燈があかあかとつき、電車が動き、自動車が走っている。