Japanische Klassiker mit Furigana
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しょうじょうるてん
生々流転
岡本 かの子
Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme
わたくしは母と一緒に本邸へ行って、枕屏風の蔭に横わっている父の死顔を見せられましたが、母はそれに取縋り、「先生、先生」と叫んでわあ/\泣き崩れたのに引かえ、わたくしはあんまり痩せさらばい小さくなった父の遺骸を見て、もうこれは父ではない。たゞ妙な薄気味の悪いものを見たという感じだけでした。
父が死んでから、わたくしの家と本邸とは全く絶縁になりました。母は暢気な顔をして暮し出しました。少し肥って、顔にごく僅か赭味がかって、立ち居振舞いに豊かな肉が胸や腹に漂うという中年近くの美人です。私は母の性質は嫌いですけれども、容貌や体格は愛重せずにはいられませんでした。芝居の義理の総見に米沢紡ぎかなにかをたっぷり着て、仕度の出来た身体を長火鉢の前に一先ず落付け、芝居へ行ったって格別面白くもないという顔付で女煙管で煙を吹いているところなぞは眼を細めて眺めたいようでした。そうかと思えば何処からか汚ない古道具を買って来て、「掘出しものだよ。たいしたものだよ」といって、古浴衣を上っ張りに着て、姉さま冠りに裾捲りをし、河岸ぶちに出て藁たわしでごし/\洗っている姿にも、どこか鍛えられた藤間の躾けの線があり、見飽きない母でした。