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Japanische Klassiker mit Furigana

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しょうじょうるてん

生々流転

岡本 かの子

Lesen Sie 生々流転 (しょうじょうるてん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 297.521 Zeichen · 586 Bildschirme

Aozora Bunko

欺かれたとはいい条、わたしの十八年間の克己精進の魂が歔欷くであろう。もはやわたしに取ってわたしというものは何の興味も希望もない。わたしは要らなくなった自分の命を熨斗にして、わたしが今世で純粋に誠実な愛を注げたと信ずる蝶子おまえに無理にも引取って貰おうかとも思って来たのだった。

なぜ肉体を目ざすか。心を目ざしたら直ぐおじさんとして弾ね返されてしまう。そしてわたしが永い禁慾生活のため異性の身体が抽象に美化され、仄かな月明りに匂い、白い神聖な碑に見え、長生の霊薬に感じられて来たことは前に語った。

わたしの異性に向う感じは形而上に昇華し、一人の美女の肉体は幅としては世界上の美女の肉体に繋り、竪には歴史上の美女に繋がっている。わたしは今世の思い出にこのふくよかな巌にわたしの魂を刻みたい。人間には何か自分を具体のものに刻み込んで遺したい本能がある。支那の寒山という慾無しを自慢の清僧ですら、吾心似秋月などゝ恬淡そうな句を詠み放しだけでよさそうなものを、未練らしく巌壁に書きつけている。清僧のおさとが知れる。

さて、女の壁はそのような無窮無限の壁なのに何でわたしがおまえ一人を目指すのかとおまえは訝るかも知れない。