Japanische Klassiker mit Furigana
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うまれいずるなやみ
生まれいずる悩み
有島 武郎
Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme
事務所をあずかる男が、ランプを持って来たついでに、夜食の膳を運ぼうかと尋ねたが、私はひょっとすると君が来はしないかという心づかいから、わざとそのままにしておいてもらって、またかじりつくように原稿紙に向かった。大きな男の姿が部屋からのっそりと消えて行くのを、視覚のはずれに感じて、都会から久しぶりで来て見ると、物でも人でも大きくゆったりしているのに今さらながら一種の圧迫をさえ感ずるのだった。
渋りがちな筆がいくらもはかどらないうちに、夕やみはどんどん夜の暗さに代わって、窓ガラスのむこうは雪と闇とのぼんやりした明暗になってしまった。自然は何かに気を障えだしたように、夜とともに荒れ始めていた。底力のこもった鈍い空気が、音もなく重苦しく家の外壁に肩をあてがってうんともたれかかるのが、畳の上にすわっていてもなんとなく感じられた。自然が粉雪をあおりたてて、所きらわずたたきつけながら、のたうち回ってうめき叫ぶその物すごい気配はもう迫っていた。私は窓ガラスに白もめんのカーテンを引いた。自然の暴威をせき止めるために人間が苦心して創り上げたこのみじめな家屋という領土がもろく小さく私の周囲にながめやられた。