Japanische Klassiker mit Furigana
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うまれいずるなやみ
生まれいずる悩み
有島 武郎
Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme
他人の漁場を使わなければならなくなったのと、北海道第一と言われた鰊の群来が年々減って行くために、さらぬだに生活の圧迫を感じて来ていた君の家は、親子が気心をそろえ力を合わして、命がけに働いても年々貧窮に追い迫られ勝ちになって行った。
親身な、やさしい、そして男らしい心に生まれた君は、黙ってこのありさまを見て過ごす事はできなくなった。君は君に近いものの生活のために、正しい汗を額に流すのを悔いたり恥じたりしてはいられなくなった。そして君はまっしぐらに労働生活のまっただ中に乗り出した。寒暑と波濤と力わざと荒くれ男らとの交わりは君の筋骨と度胸とを鉄のように鍛え上げた。君はすくすくと大木のようにたくましくなった。
「岩内にも漁夫は多いども腕力にかけておらにかなうものは一人だっていねえ」
君はあたりまえの事を言って聞かせるようにこう言った。私の前にすわった君の姿は私にそれを信ぜしめる。
パンのために生活のどん底まで沈み切った十年の月日――それは短いものではない。たいていの人はおそらくその年月の間にそういう生活からはね返る力を失ってしまうだろう。世の中を見渡すと、何百万、何千万の人々が、こんな生活にその天授の特異な力を踏みしだかれて、むなしく墳墓の草となってしまったろう。