Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うまれいずるなやみ

生まれいずる悩み

有島 武郎

Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme

Aozora Bunko

私は君を忘れてはならない。もう港を出離れて木の葉のように小さくなった船の中で、君は配縄の用意をしながら、恐ろしいまでに荘厳なこの日の序幕をながめているのだ。君の父上は舵座にあぐらをかいて、時々晴雨計を見やりながら、変化のはげしいそのころの天気模様を考えている。海の中から生まれて来たような老漁夫の、皺にたたまれた鋭い眼は、雲一片の徴をさえ見落とすまいと注意しながら、顔には木彫のような深い落ち付きを見せている。君の兄上は、凍って自由にならない手のひらを腰のあたりの荒布にこすりつけて熱を呼び起こしながら、帆綱を握って、風の向きと早さに応じて帆を立て直している。雇われた二人の漁夫は二人の漁夫で、二尋置きに本縄から下がった針に餌をつけるのに忙しい。海の上を見渡すと、港を出てからてんでんばらばらに散らばって、朝の光に白い帆をかがやかした船という船は、等しく沖を目がけて波を切り開いて走りながら、君の船と同様な仕事にいそしんでいるのだ。

夜が明け離れると海風と陸風との変わり目が来て、さすがに荒れがちな北国の冬の海の上もしばらくは穏やかになる。やがて瀬は達せられる。