Japanische Klassiker mit Furigana
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うまれいずるなやみ
生まれいずる悩み
有島 武郎
Lesen Sie 生まれいずる悩み (うまれいずるなやみ) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 50.587 Zeichen · 100 Bildschirme
君は始めて気がついたように年老いた君の父上のほうを振り返って見た。父上はひざから下を水に浸して舵座にすわったまま、じっと君を見つめていた。今まで絶えず君と君の兄上とを見つめていたのだ。そう思うと君はなんとも言えない骨肉の愛着にきびしく捕えられてしまった。君の目には不覚にも熱い涙が浮かんで来た。君の父上はそれを見た。
「あなたが助かってよござんした」
「お前が助かってよかった」
両人の目には咄嗟の間にも互いに親しみをこめてこう言い合った。そしてこのうれしい言葉を語る目から互い互いの目は離れようとしなかった。そうしたままでしばらく過ぎた。
君は満足しきってまた働き始めた。もう目の前には岩内の町が、きたなく貧しいながらに、君にとってはなつかしい岩内の町が、新しく生まれ出たままのように立ち列なっていた。水難救済会の制服を着た人たちが、右往左往に駆け回るありさまもまざまざと目に映った。
なんとも言えない勇ましい新しい力――上げ潮のように、腹のどん底からむらむらとわき出して来る新しい力を感じて、君は「さあ来い」と言わんばかりに、艪をひしげるほど押しつかんだ。そして矢声をかけながら漕ぎ始めた。