Japanische Klassiker mit Furigana
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たはらしのはんざい
田原氏の犯罪
豊島 与志雄
Lesen Sie 田原氏の犯罪 (たはらしのはんざい) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.957 Zeichen · 57 Bildschirme
」
その二――
田原さんの隣りに上坂という家があった。其処の細君としげ子とはいつしか顔馴染になって、夏の夕方など静かな通りで立ちながら話をすることが時々あった。それからまた田原さんの向うへ宇野という人が後に越して来た。其処の細君もいつしか前の二人と親しくなった。そしてその細君は時々田原さんの家へ遊びに来たり、上坂の家へ遊びに行ったりした。四十許りの子供の無いヒステリックな女であった。
所がだんだん向うから接近してくるにつれて、宇野の細君はしげ子に種々なことを話した。それが皆他人の家の内情に関することであった。しまいには、その話が上坂の家の方のことに移っていった。――上坂の家は借財のために二度強制執行を受けたことがある。上坂の細君はもと賤しい素性の女であった、上坂の細君がしげ子のことをお人好しの馬鹿だと云った、云々。
実際人のいいしげ子はそんな話をただ「左様ですか。」と云ってきき流していた。そして相変らず上坂の細君とも挨拶を交わしていた。
或時のこと、丁度夕方しげ子が何の気なしに表に立っていると、其処に上坂の細君が通りかかった。しげ子はいつものように挨拶をした。