Japanische Klassiker mit Furigana
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うみがめ
異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二
岡本 綺堂
Lesen Sie 異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二 (うみがめ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 144.507 Zeichen · 291 Bildschirme
しかし、わざわざ彼等のあとを尾けて行って、それを確かめる程の好奇心も湧き出さなかったので、僕は再び水の方に向き直って自分の釣りに取りかかったが、市野の言ったような大きいすずきは勿論のこと、小ざかな一匹もかからないので、僕ももう忍耐力をうしなった。
「帰ろう、帰ろう。つまらない。」
ひとりごとを言いながら釣道具をしまった。宵闇の長い堤をぶらぶら戻ってくると、僕をじらすように大きい魚の跳ねあがる音が暗い水の上で幾たびかきこえた。そこらの草のなかには虫の声が一面にきこえる。東京はまだ土用が明けたばかりであろうが、ここらは南の国といってもやはり秋が早く来ると思いながら、からっぽうの魚籠をさげて帰った。いや、帰ったといっても、ようよう半道ばかりで、その辺から川筋はよほど曲っていくので、僕は堤の芒にわかれを告げて、堤下の路を真っ直ぐにあるき出すと、暗いなかから幽霊のようにふらふらと現われたものがある。思わず立ちどまって窺ってみると、この暗やみでどうして判ったのか知らないが、その人は低い声で言った。
「秋坂さんじゃございませんか。」
それは若い女の声であった。
尾花川の堤にはときどきに狐が出るなどというが、まさかそうでもあるまいと多寡をくくって、僕は大胆に答えた。