Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
二
「ナオミちゃん、お前お腹が減ってやしないか?」
そう云っても、
「いいえ、なんにも喰べたくない」
と云うこともありますが、減っている時は遠慮なく「ええ」と云うのが常でした。そして洋食なら洋食、お蕎麦ならお蕎麦と、尋ねられればハッキリと喰べたい物を答えました。
二
「ナオミちゃん、お前の顔はメリー・ピクフォードに似ているね」
と、いつのことでしたか、ちょうどその女優の映画を見てから、帰りにとある洋食屋へ寄った晩に、それが話題に上ったことがありました。
「そう」
と云って、彼女は別にうれしそうな表情もしないで、突然そんなことを云い出した私の顔を不思議そうに見ただけでしたが、
「お前はそうは思わないかね」
と、重ねて聞くと、
「似ているかどうか分らないけれど、でもみんなが私のことを混血児みたいだってそう云うわよ」
と、彼女は済まして答えるのです。
「そりゃそうだろう、第一お前の名前からして変っているもの、ナオミなんてハイカラな名前を、誰がつけたんだね」
「誰がつけたか知らないわ」
「お父つぁんかねおッ母さんかね、―――」
「誰だか、―――」
「じゃあ、ナオミちゃんのお父つぁんは何の商売をしてるんだい」