Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
よく、腹が減った時なぞにまずい物を夢中でムシャムシャ喰うことがある、だんだん腹が膨れて来るに随って、急に今まで詰め込んだ物のまずさ加減に気がつくや否や、一度に胸がムカムカし出して吐きそうになる、―――まあ云って見れば、それに似通った心地でしょうが、今夜も相変らずこの鼻を相手に、顔を突き合わせて寝ることを想像すると、「もうこの御馳走は沢山だ」と云いたいような、何だかモタレて来てゲンナリしたようになるのでした。
「これもやっぱり親の罰だ。親を欺して面白い目を見ようとしたって、ロクな事はありゃしないんだ」
と、私はそんな風に考えました。
しかし読者よ、これで私がすっかりナオミに飽きが来たのだと、推測されては困るのです。いや、私自身も今までこんな覚えはないので、一時はそうかと思ったくらいでしたけれど、さて大森の家へ帰って、二人きりになって見ると、電車の中のあの「満腹」の心は次第に何処かへすッ飛んでしまって、再びナオミのあらゆる部分が、眼でも鼻でも手でも足でも、蠱惑に充ちて来るようになり、そしてそれらの一つ一つが、私に取って味わい尽せぬ無上の物になるのでした。
私はその後、始終ナオミとダンスに行くようになりましたが、その度毎に彼女の欠点が鼻につくので、帰り途にはきっと厭な気持になる。