Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
「さあ、今度は浜さんが足の番!」
と云って、寝ながら体をぶん廻しのようにぐるぐる廻したり、廻す拍子に両脚を上げて蚊帳の天井を蹴っ飛ばしたり、向うの端から此方の端へぽんと枕を投げつけたりする。その海豹の活躍ぶりが激しいので、それでなくても布団の半分はみ出している蚊帳の裾がぱっぱっとめくれて、蚊が幾匹も舞い込んで来る。「此奴あいけねえ、大変な蚊だ」と、熊谷がムックリ起き上って、蚊退治を始める。誰かが蚊帳を蹈んづけて、釣り手を切って落してしまう。その落ちた中でナオミが一層ばたばたと暴れる。釣り手を繕って、蚊帳を吊り直すのに又長いこと時間がかかる。そんな騒ぎで、やっといくらか落ち着いたような気がしたのは、東の方が明るみかけた時分でした。
雨の音、風の響き、隣りに寝ている熊谷の鼾、………私はそれが耳について、ついとろとろとしたかと思うと、ややともすれば眼がさめました。一体この部屋は二人で寝てさえ狭苦しい上に、ナオミの肌や着物にこびりついている甘い香と汗の匂とが、醗酵したように籠っている。そこへ今夜は大の男が二人も余計殖えたのですから、尚更たまらない人いきれがして、密閉された壁の中は、何だか地震でもありそうな、息の詰まるような蒸し暑さでした。