Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ちじんのあい

痴人の愛

谷崎 潤一郎

Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme

Aozora Bunko

しかし、私は既にその頃ナオミを恋していたかどうか、それは自分にはよく分りません。そう、たしかに恋してはいたのでしょうが、自分自身のつもりでは寧ろ彼女を育ててやり、立派な婦人に仕込んでやるのが楽しみなので、ただそれだけでも満足出来るように思っていたのです。が、その年の夏、会社の方から二週間の休暇が出たので、毎年の例で私は帰省することになり、ナオミを浅草の実家へ預け、大森の家に戸締りをして、さて田舎へ行って見ると、その二週間と云うものが、たまらなく私には単調で、淋しく感ぜられたものです。あの児が居ないとこんなにもつまらないものか知らん、これが恋愛の初まりなのではないか知らん、と、その時始めて考えました。そして母親の前を好い加減に云い繕って、予定を早めて東京へ着くと、もう夜の十時過ぎでしたけれど、いきなり上野の停車場からナオミの家までタクシーを走らせました。

「ナオミちゃん、帰って来たよ。角に自動車が待たしてあるから、これから直ぐに大森へ行こう」

「そう、じゃ今直ぐ行くわ」

と云って、彼女は私を格子の外へ待たして置いて、やがて小さな風呂敷包を提げながら出て来ました。