Japanische Klassiker mit Furigana
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ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lesen Sie 痴人の愛 (ちじんのあい) von 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 179.399 Zeichen · 353 Bildschirme
二十七
そんなに傍へ寄って来ないで、もっと離れていらっしゃいよ、指一本でも触らないようにして頂戴よ」
「じゃあ仕方がない、友達のキッスでもしておくれよ」
「大人しくしていればして上げるわ、だけども後で気が変になりやしなくって?」
「なってもいいよ、もうそんな事を構ってなんかいられないんだ」
二十七
その晩ナオミは、「指一本でも触らないように」私をテーブルの向う側にかけさせ、ヤキモキしている私の顔を面白そうに眺めながら、夜遅くまで無駄口を叩いていましたが、十二時が鳴ると、
「譲治さん、今夜は泊めて貰うわよ」
と、又しても人をからかうような口調で云いました。
「ああ、お泊り、明日は日曜で己も一日内にいるから」
「だけども何よ。泊ったからって、譲治さんの注文通りにはならないわよ」
「いや、御念には及ばないよ、注文通りになるような女でもないからな」
「なれば都合が好いと思っているんじゃないの」
そう云って彼女は、クスクスと鼻を鳴らして、
「さ、あなたから先へお休みなさい、寝語を云わないようにして」
と、私を二階へ追い立てて置いて、それから隣りの部屋へ這入って、ガチンと鍵をかけました。
私は勿論、隣りの部屋が気にかかって容易に寝つかれませんでした。