Japanische Klassiker mit Furigana
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しろくれない
白くれない
夢野 久作
Lesen Sie 白くれない (しろくれない) von 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 24.846 Zeichen · 50 Bildschirme
心急き給ふ事なかれ。まづ此方へ入らせ給へ。見せ申すべきものありとて、われを本堂の内陣に誘ひ、壇に登りてマリア像の肩に両手をかけ、おもむろに前へ引き倒ふすに、その脚の下の蓮台と思しきものの辺、左右に引き開け、階段の降り口、大きく開けたり。その下へ二人して降り行くに一度倒ふれしマリア像は自から共に立ち帰りたるらし。階段は真の闇となりて足音のみぞ、おどろ/\しくより増りける。
奈美女、わが手を取りて其の中を二三間ほど歩み降り行くに、土中の冷気身に泌みて知らぬ世界へ来し心地しつ。やがて彼女の手より閃めき出でし蘭法附木の火、四方に並べし胡麻燈油の切子硝子燈籠に入れば、天井四壁一面に架け列ねしギヤマン鏡に、何千、何百となく映りはえて、二十余畳にも及ぶべき室内、さながらに白昼の如く、緞子の長椅子、鳥毛の寝台、絹紗の帳、眼を驚かすばかりなり。又青貝の戸棚に並びたるは珍駄婁の媚酒、羅王中の紅艶酒。蘇古珍の阿羅岐焼酎。ギヤマン作りの香煙具。銀ビイドロの水瓶。水晶の杯なぞ王侯の品も及ばじな。前の和尚の盗み蓄めにやあるらむ。金銀小判大判。新鋳の南鐐銀のたぐひ花模様絨氈の床上に散乱して、さながらに牛馬の余瀝の如し。