Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しらねのふもと

白峰の麓

大下 藤次郎

Lesen Sie 白峰の麓 (しらねのふもと) von 大下 藤次郎 (おおしたとうじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.238 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

三度五度、ついには全くその姿を失うて、車は大なるカーブを画き、南の方無格恰な富士の頂を見た時、夢から醒めたような思いがした。そしてこの時ほど富士山を醜く見たことはない。

十二時半に甲府に着いて、すぐ鉄道馬車の客となった。今にも毀れそうな馬車だ。馬は車に馴れず、動かじと佇むかと思うと、また俄かに走り出す。車の右は西山一帯の丘陵で、その高低参差たる間から、時々白い山が見える。南湖の手前で少しく川に沿うて堤の上をゆく。咲き残りの月見草が侘しげに風に動いている。柳は錆びた色をしてこれも風に靡いている。ちょっと景色のよいところだと思うた。

青柳という町を過ぎる。近きにお祭があるというので、軒提灯を吊して美しく飾っていた。

形面白き柳の巨木の、水に臨んで、幾株か並んでいる広い河原、そこに架けたる手摺なき長い橋を渡ると鰍沢の町だ。私は右側の粉奈屋という旅店に投じた。丁度三時半。

二階から富士が見える。やはり形が悪い。富士の美しいのは裾野が展いているからだ。裾を隠して頂だけでは、尖端鋭き金峰山などの方が遥かに美しい。富士は頭を隠してもよい、裾野は隠れてはいけない。