Japanische Klassiker mit Furigana
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しらねのふもと
白峰の麓
大下 藤次郎
Lesen Sie 白峰の麓 (しらねのふもと) von 大下 藤次郎 (おおしたとうじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.238 Zeichen · 45 Bildschirme
一
小島烏水氏は甲斐の白峰を世に紹介した率先者である。私は雑誌『山岳』によって烏水氏の白峰に関する記述を見、その山の空と相咬む波状の輪廓、朝日をうけては紅に、夕日に映えてはオレンジに、かつ暮刻々その色を変えてゆく純潔なる高峰の雪を想うて、いつかはその峰に近づいて、その威厳ある形、その麗美なる色彩を、わが画幀に捉うべく、絶えず機会をうかがっていた。
私が白峰連嶺を初めて見たのは、四十一年の秋、甲州山中湖に遊んだおりで、宿雨のようやく霽れたあした、湖を巡りて東の岸に立った時、地平線上、低く西北に連なる雪の山を見た。白峰! と思ったが、まだ疑いはある。ポケットから地図を出す、磁石を出す、そして初めて白峰! と叫んだ。今自分の立っているところからはよく見えぬ。私は岸を東へ東へと走った、やがて道は尽きた、崖と水とは相接して足がかりは僅かに数寸、私は辛うじてそこをも通った。岩を伝わった。樹根に縋った。こうして往けるだけ往った。そしてささやかなる平地に三脚を据えて、山中の湖に浮べる如きなつかしき白峰の一部を写したことがあった。
翌年の三月某日、これも雨後の朝、鎌倉にゆく途中、六郷鉄橋の辺から、再び玲瓏たる姿に接した。