Japanische Klassiker mit Furigana
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しろあり
白蟻
小栗 虫太郎
Lesen Sie 白蟻 (しろあり) von 小栗 虫太郎 (おぐりむしたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 54.099 Zeichen · 106 Bildschirme
まったく、貴方であってもならず、なくてもいかず、そのどっちになっても、私の絶望には変りがないのです。当然貴方の幻は、その場限りで去ってしまうのですから、かえっていまのように、執念い好奇心だけに倚り縋っていて、朦朧とした夢の中で楽しんでいる――ともかく、そのほうが幸福なのかも判りませんわ。けれども、そうして日夜あの疑惑の事ばかりを考え詰め、その解答が生れる日の怖ろしさをまた思うと、はては頭の中で進行している、言葉の行間がバラバラになってしまって、自分もともども、その中の名詞や動詞などを一緒に、どこかへ飛び去ってしまうのではないかと思われてきました。事実、私という存在が、脳髄そのものだけのような気がして、あるいはこのまま狂人の世界に惹き入れられてゆくのではないかと思われて、不安はいっそう募ってくるばかりでした。ところが、その瀬戸際で危うく引き止めてくれたのは、ある一つの観念が、ふと私の頭の中で閃いたからです。つまり、それをさせぬためには、まずどっちにでも、均衡うだけの重錘を置くことだ。その茫漠とした靄のような物質を、単なる曖昧だけのものとはせず、進んで具象化して、一つの機構に組上げなければならぬ――と教えてくれました」