Japanische Klassiker mit Furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lesen Sie 真珠夫人 (しんじゅふじん) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 289.296 Zeichen · 578 Bildschirme
瑠璃子はふと、父が若い時に何かに激昂すると、直ぐ日本刀を抜いて、ビュウビュウと、部屋の中で振り廻すのが癖だったと、亡き母から聞いたことを思い出した。
あんなに、父が昂奮しているとすると、若し明日荘田の代理人が、父に侮辱に近い言葉でも吐くと短慮な父は、どんな椿事を惹き起さないとも限らないと思うと、瑠璃子は心配の上に、又新しい心配が、重なって来るようで、こんな時家出した兄でも、いて呉れゝばと、取止めもない愚痴さえ、心の裡に浮んだ。
その日、五時を廻った時だった。父は、瑠璃子を呼んで、外出をするから、車を呼べと云った。もう、金策の当などが残っている筈はないと思うと、彼女は父が突然出かけて行くことが、可なり不安に思われた。
「何処へ行らっしゃるのでございますか。もう直ぐ御飯でございますのに。」瑠璃子は、それとなく引き止めるように云った。
「いや、木下から預った軸物が急に心配になってね。これから行って、届けてやろうと思うのだ。向うでは、あゝした高価なものだとは思わずに、預けたのだろうから。」父の答えは、何だか曖昧だった。
「それなら、直ぐ手紙でもお出しになって、取りに参るように申したら、如何でございましょう。