Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lesen Sie 真珠夫人 (しんじゅふじん) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 289.296 Zeichen · 578 Bildschirme
それが、一夜限りの空しい夢と消えないで、実生活の上に、ちゃんとした根を下して来たことが、信一郎には此上なく嬉しかった。彼は絨毯の上を、しっかりと歩んでいた積であったが、もし傍観者があったならば、その足付が、宛然躍っているように見えたかも知れない。夫人と、美しい客間で二人限り、何の邪魔もなしに、日曜の午後を愉快に語り暮すことが出来る。そうした楽しい予感で、信一郎の心は、はち切れそうに一杯だった。
長い廊下を、十間ばかり来たとき、少年は立ち止まって、其処の扉を指した。
「此方でございます。」
信一郎は、その中に瑠璃子夫人が、腕椅子に身体を埋ませるように掛けながら、自分を待っているのを想像した。
彼は、興奮の余り、かすかに顫えそうな手を扉の把手にかけた。彼が、胸一杯の幸福と歓喜とに充されて、その扉を静かに開けたとき、部屋の中から、波の崩れるように、ワーッと彼を襲って来たものは、数多い男性が一斉に笑った笑い声だった。
彼は、不意に頭から、水をかけられたように、ゾッとして立ち竦んだ。
三
彼がハッと立ち竦んだ時には、もう半身は客間の中に入っていた。
凡てが、意外だった。