Japanische Klassiker mit Furigana
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しんじゅふじん
真珠夫人
菊池 寛
Lesen Sie 真珠夫人 (しんじゅふじん) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 289.296 Zeichen · 578 Bildschirme
男性の威厳を思え! 夫人の言葉をスッパリと突き放してしまえ! 信一郎の心の奥に、弱いながら、そう叫ぶ声があった。
信一郎は、心の中に夫人の美しさに、抵抗し得る丈の勇気を、やっと蒐めながら云った。
「でも、奥さん! 私、このまゝお暇いたした方がいゝように思うのです。あゝした立派な方が蒐まっている客間には、私のような者は全く無用です。どうも、大変お邪魔しました。」
信一郎は、可なりキッパリと断りながら、急いで踵を返そうとした。
「まあ! 貴君、何をそんなにお怒り遊ばしたの、何か妾が貴君のお気に触るようなことをいたしましたの、折角いらして下すって、直ぐお帰りになるなんて、余りじゃありませんか。客間に蒐まっていらっしゃる方なんて、妾仕方なくお相手いたしておりますのよ。妾が、妾の方から求めてお友達になりたいと思ったのは、本当は貴君お一人なのですよ。」
信一郎は、そう云いながら、何事もないように、笑っている夫人の美しさに、ある凄味をさえ感じた。夫人の口吻から察すれば、夫人は周囲に集まっている男性を、蠅同様に思っているのかも知れない。もし、そうだとすると、信一郎なども、新来の初心な蠅として、たゞ一寸した珍しさに引き止められているのかも知れない。