Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

しんじゅふじん

真珠夫人

菊池 寛

Lesen Sie 真珠夫人 (しんじゅふじん) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 289.296 Zeichen · 578 Bildschirme

Aozora Bunko

「そうか。やっぱり付いていたのか。」

信一郎の声も、やゝ顫いを帯びていた。

「何うかしたのですか。何うかしたのですか。」気の弱い静子の声は、可なり上ずッていた。

信一郎は、妻の気を落着けようと、可なり冷静に答えた。

「いや何うもしないのだ。たゞ、自動車が崖にぶっ突かってね。乗合わしていた大学生が負傷したのだ。」

「貴君は、何処もお負傷はなかったのですか。」

「運がよかったのだね。俺は、かすり傷一つ負わなかったのだ。」

「そしてその学生の方は。」

「重傷だね。助からないかも知れないよ。まあ奇禍と云うんだね。」

静子は、夫が免れた危険を想像する丈けで、可なり激しい感動に襲われたと見え、目を刮ったまゝ暫らくは物も云わなかった。

信一郎も、何だか不安になり始めた。奇禍に逢ったのは、大学生ばかりではないような気がした。自分も妻も、平和な気持を、滅茶々々にされた事が、可なり大きい禍であるように思った。が、そればかりでなく、時計やノートを受け継いだ事に依って、青年の恐ろしい運命をも、受け継いだような気がした。彼は、楽しく期待した通り静子に逢いながら、優しい言葉一つさえ、かけてやる事が出来なかった。