Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぴこんちゅうかん
神秘昆虫館
国枝 史郎
Lesen Sie 神秘昆虫館 (しんぴこんちゅうかん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 105.803 Zeichen · 213 Bildschirme
ちょうどこの頃のことである。全然別の方角で、別の事件が起こっていた。
ここは赤坂青山の一画、そこに一宇の大屋敷がある。大大名の下屋敷らしい。宏壮な規模、厳重な構え、巡らした土塀の屋根を越し、鬱々と木立が茂っている。
御三卿の一方田安中納言家、そのお方の下屋敷である。
その裏門が音なく開き、タラタラと一群の人数が出た。黒仕立てに黒頭巾、珍らしくもない密行姿、いずれも武士で十五、六人、ただしその中ただ一人だけ、黒小袖に黒頭巾、若い女が雑っていた。みんなが尊敬をするところを見ると、これら一群の支配者らしい。身長高く痩せてはいるが、一種云われぬ品位がある。鬼気と云った方がいいかも知れない。あるいは妖気と云うべきかも知れない。縹渺としたところがある。裾の辺が朦朧と暈け、靄でも踏んでいるのだろうか? と思わせるようなところがある。
一挺の駕籠が舁ぎ出された。
「鉄拐ご夫人、お召しなさりませ」
一人の武士が会釈した。
すると頷いたが乗ろうともせず、駕籠の上へ片手を載せたまま、女方術師鉄拐夫人は、頸を反らせると空を見た。
「とうとう後手へ廻わされて、永生の蝶一匹を、一ツ橋家へ取られたが、今度はどうでも先手を打ち、あの桔梗という森の娘を、こっちへ奪って来なければならない。