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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

「それだ」

と、後醍醐は、お唇を噛んだ。

「どんな大難も、一過を待てば、おのずから雲間に晴天を見せてくれる。――藤房、わしは死なぬぞ!」

藤房はハッと思った。

御自害を考えておられたのかと知ったのである。はらはらとつい涙がこぼれた。――しかしそういって雲間の切れを仰いでいる後醍醐のおん眉は、この君の超人的な資質を荒彫りの鬼神仮面みたいにくッきり抉り出しておられた。

藤房はあわてて涙を拭い。

「オオ、空もやや明るんで来たそうな。のう季房、ここはどの辺だろう」

「よく分りませぬが、ゆうべから西へ西へ来た気がします。近くの水音は、木津へ落ちてゆく谷川かと思われますが」

「うかと、里へ出ても危ない。……さて、どこかにお休みをねごうて、御食でもさしあげられる小屋でもあればよいが」

「見てまいりましょう」

彼がすぐ駈け出しかけると、後醍醐はその季房をよびとめて、

「そちの護持する神器は、藤房にあずけてまいれ」

と御諚だった。

賢所の宝剣と御鏡とは、行宮を落ちて出るとき、帳の帛を裂いて、彼がきびしく背に守っていたのである。御諚にまかせ、それを兄藤房へわたすと、彼はどこかへ走って行った。