Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
「…………」
後醍醐もひしと抱いて、皇子の背へ、はらと御落涙のふうだった。どちらも破衣素跣足の親と子である。瞬時、この尺土の上の父子像には、ただの土民や散所民とも何の違いもない血の慟哭が見えていた。
だから深栖や松井の兵にも、それだけは共通な人間感をよび起した。……で彼らもまた、はらわたをしぼられるような苦渋にみちた顔していたが……やがてわれに返ッた深栖三郎は、突如、唖みたいな発声をふるわせて、こう叫び出した。
「た、たいへんだ。みかどだ。み、みかどに相違ねえわ。蔵太、そっちの輿を貸してくれ」
余りな重さと畏れに彼は自分で抱えこんだ大魚に狼狽したものらしい。さっそく古輿には天皇を舁きまいらせ、皇子公卿たちは馬の背へ押し上げて、
「それ、いそげ」
と、当日の捕虜収容所とされていた大和内山の永久寺へ駈けて行った。
幕軍はかねて布告していた。
「諸方で捕えた落人は、一応みな内山永久寺へ曳いて来い。そして備えの“捕虜ノ簿”に氏名を載せ、後日の恩賞を待つがいい」――と。
笠置が陥ちて諸方から曳かれて来る捕虜はたいへんな数にのぼった。それも名だたる人々ばかりだ。さしも広い永久寺五十二坊の寺中が足のふみ場もない。