Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
とまれ世は有為転変、蛟龍も淵に潜む時もありとか。お心落しなく、元弘二年の新玉をお迎えあらせらるるよう、何とぞよしなに、ご奏聞のほどを」
道誉は、告げ終ると、廂から鎖木戸の方へ、さっと戻りかけた。
すると、なに思ったか、千種忠顕は「――道誉どの。ちょっと」と追いすがって、彼を外の葦垣の蔭へ誘おうとした。そして胸の密語を急に※(「口+耳」、第3水準1-14-94)きかけそうに、その眼が挑んだ。
道誉はすぐさとった。――この公卿はおれを抱き込む気でいるな。――腹のなかで愍笑しながら、彼はトボけた顔したまま、木戸の外へ出た。身を交わすやいな、外から錠を卸して大股に立ち去った。
「あぶない虎口」
彼は帰路の馬上で、悪戯ッぽく思いうかべていた。ぽかんと後に取り残されたであろう忠顕の顔が彼にはおかしい。
やがてその道誉は、佐女牛の邸に帰ると、さっそく早川主膳を奥へ呼びつけていた。
「どうした? そのご小右京の方のことは」
「はっ、なんとも」
「次は自分の恋の番だ。忘れていたわけではない。ここ半月余は、先帝の女房がたの儀で、ついわが恋も振り向けずにいたまでのことだ。小右京の否やの返辞はなんとしたか」