Japanische Klassiker mit Furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme
「剃刀ですか」
「そうだ。四月ぶりの都入り。宿所割の沙汰が来るまで、せめて髯でも剃って少し洒落ておこうよ。早く借りて来い」
やがてのこと高氏は、十郎を床几のまえに膝立てさせて両の手に鏡を持たせ、その鏡へ向って、百日余のヒゲをぞりぞり自分で剃っていた。
どこからか、鏡の中の顔を覗くように、梅の花が散ってくる。
去年。――
彼は鎌倉軍の第四軍をひきいて、伊賀方面へまわされた。一手の司令官の格である。
が、まもなく笠置は陥ち、赤坂城も潰え去った。そこで諸将はあらそッて現地からもとの洛中洛外へ凱歌の潮を引っ返した。高氏の麾下も各※(二の字点、1-2-22)、なんのかのと理くつをつけてはみな引き揚げた。
ひとり高氏だけは、この正月も山野ですごした。伊賀路を捨て、大和、紀伊、和泉、摂津を股にかけての跋渉を、あえて続けて来たのである。
「――各地にひそむ、大塔ノ宮一味や楠木の残党を掃討のために」
名分はそれだったが、彼の意中には、べつに何か後日のための目的があったのかも分らない。それの証拠には、軽馬軽兵がいいとして、手兵の半数も、途中から鎌倉の直義の許へ送り返してしまっている。