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Japanische Klassiker mit Furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Lesen Sie 私本太平記(三) (しほんたいへいき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 222.108 Zeichen · 446 Bildschirme

Aozora Bunko

女は、藤夜叉ではなかったのだ。

おもても上げえない。ものも言いえない。女の姿は世馴れないことだけを語っている。

「……?」

高氏は肋骨に一つ波を見せて大きくふウと息をついた。

よくよく眸はこらしたが、藤夜叉ではない。藤夜叉でなければ誰か。それが思いあたりもないのだった。

「女性。……もっとお進みなさい。あまり遠い」

「……はい」

「ついぞ高氏は見知らぬが、折入ってとは何の用か。なんぞ公事の訴訟頼みでもあるのか」

「いえ……」

女の顔が、はじめて高氏の眼に映った。二月の日蔭のどこかにはまだ消え残っていそうな雪にふと出会った思いである。睫毛が濃い。襟くびの細さや総じての嫋かな薄い体つきは、袂の忍び香に交じって涙の香もするようだった。

「お見覚えもないはずでございまする。初めての御見。それなのに、こう厚顔ましゅう」

「では、いずこの」

「奇しき御縁と申すしかございませぬ。先年、わが良人が鎌倉表へ曳かれて長い幽居のうちに、ごねんごろなお宥りを給うたうえ、良人の形見までを、おあずかりおき下さいましたそうな」

「や。……ではお許は」

「はい、亡き日野右少弁俊基の妻、小右京と申すものにござりまする」